PI-CHIKU CHIKU CHIKU… IT’S BEAUTIFUL DAY, PI.
ピーチクチクチクチク。
今日もいい天気だピ。ん、キミもパンを買いに来た人?
ボクはひばり。近くの森に住んでいる小さな鳥だピ!
この街の名前は『オオソラモ野田みずき』。
たくさんの人が集まる、大型の分譲住宅地なんだピ。
でも、ただの街じゃないのサ。
ボクら鳥たちが住んでいる長~い“緑道”、
水の中で生き物たちが気持ちよさそうに暮らす“ビオトープ池”、
そしてボクも大好きな、焼きたてのパンを毎朝食べられる“トイット”。
人も動物も、みんなが気持ちよ~く暮らせるように作られた街なんだピ。
ボクのお父さんも、そのお父さんも、ず~っと前のお父さんも、この緑道で育ったんだって。
だからボクはこの街のこと、なんでも知ってるってわけだピ。
せっかくだから、次のパンが焼き上がるまで、この街とトイットのヒミツをキミに教えてあげるピ。
ピ。ピーチクチクチクチク。
ボクらの住処に、
人間がやってきた。
HUMANS HAVE COME
TO OUR HOME.
近くに流れている川は見た?あれは利根川。ここは昔、水運で栄えていたんだって。
きれいな並木道には、今でも春になると桜や菜の花でいっぱいになるんだピ。ボクも大好きなお散歩コースだピ!でも、時代の流れと一緒に、だんだんと人も少なくなったみたい。
そんな中で、野田市が街を元気にしようと、都市計画を立てたんだって。
最初の予定では、ここは産業を支えるための物流倉庫になる計画だったんだピ。
でも「街中をたくさんの大きなトラックが走るのは危ない」ってみんなから声が上がって、開発が止まっていたんだピ。
土地はあるけど、な~んも建物は立ってない。そこで手を挙げたのが、拓匠開発っていう人たちだったんだピ。
彼らの街づくりは、ちょっと変わってたピ。
“あめりか”とかいうところの街並をヒコーキから見たときに、この街を思いついたみたい。
道路や緑地を活かして街全体を囲うデザインとか、行き止まりをつくらないクルドサックなんかは、他の街ではあんまり見ないピね~。それに「地域の緑を残そう」なんて声も聞いたピ。だから街中にあるビオトープ池は、外来種じゃなくて利根川の生き物が泳いでいるんだピ。もちろん、ボクらが住む緑地帯も元々あったところサ。これはホシノさんっていう人から聞いたんだけど、普通は街を作るときは建物から考えるみたいだピ。でも、この街は広場や緑道から作ったんだって。「街を作るなら、今ある生態系の延長線上に作るんだ」なんて言ってたピ。
つまり、住人たちから見れば、ボクらはこの街の先輩ってワケなのサ。えっへん!
この街にパン屋さんがあったらいいね。
その一言から始まった。
この街にパン屋さんが
あったらいいね。
その一言から始まった。
IT WOULD BE NICE IF THERE WERE
A BAKERY IN THIS TOWN.
IT ALL STARTED WITH THAT ONE WORD.
まちづくりが進む中で、ヤマムロさんっていう人がふと言ったんだピ。
「ここにパン屋さんがあるといいですね」って。
朝、パンが焼けるいい香りに誘われて、風に吹かれながら緑あふれる道を歩いていく。ヤマムロさんの何気ない一言で、そんな景色がみんなの頭に浮かんだみたい。すぐに「いいね!パン屋やろうよ!」なんて盛り上がってたピ。でも、そこからが大変だったんだピ。だって彼ら、不動産屋だからもちろんパン屋のことなんて何も知らないんだもん。近くの有名なパン屋さんに相談しに行ったら「あんなところじゃ成功しないからやめておいた方がいいよ」なんて言われたんだって。それを聞いて「絶対に成功させよう」なんて、逆に燃えちゃったみたい。分かるナァ~、その気持ち。ボクもお父さんに「エサをちょーだい」って言ったときにね、…え、そんなこと聞いてないって?ピー!チクチクチクチク!
ま、そこから参加したのが、いまも大活躍しているニワさんって人だピ。
この人は凄腕で、一度食べればその味を再現できちゃうんだって。おもしろい人たちには、おもしろい人が集まるんだナァ~。そんな彼らが目指したのは、本格的で他にはない、オンリーワンのパン屋さん。お店の中にはたくさんの機械があって、毎朝、粉からつくってるんだピ。一から作るから、パンによって焼きあがる時間も違う。朝はやわらかいソフト系のパン、午後はかたいハード系のパン。買いに来るタイミングによって、食べられるパンの種類が違うのも楽しいところだピ。そして「他でも売ってるから、あんぱんとカレーパンは売らない」って決めたんだピ。違うものを作る。そのこだわりが、拓匠開発流みたいだピ。ボクはカレーパンも好きだけどネ。
建物を作るんじゃない、文化を作るんだ。 建物を作るんじゃない、 文化を作るんだ。
WE DON’T BUILD BUILDINGS,
WE BUILD CULTURE.
トイットができてから、街の様子も変わってきたよ。
最初はお客さんもあまり来なくて、苦労したみたい。彼らがせっかく作ったパンを、泣きながら処分する姿を見るのは悲しかったナァ…。でも、だんだんトイットの存在が広がってきて、お客さんが訪れ始めたんだ。いまでは人気店で、だいたい夕方までには売り切れちゃうんだピ。しかも、街の人たちだけじゃなくて、遠いところからウワサを聞きつけてやって来る人もいるんだピ。パンが大好きな人もいれば、自転車に乗るのが好きで、トイットを目指してやってくる人もいるんだピ。ファンが増えているのは、パンの味だけじゃないんだって。彼らは言っていたよ。「人気の秘密は、パンの味だけじゃなくて、心のこもった接客なんだ」って。街の人は「人気だからいつも売り切れてるのよね」なんて笑っていたり、「私の街にはパン屋があるんだ!」なんて自慢しているだピ。
トイットはこの野田みずきから始まったけど、いまでは他の分譲地や千葉公園なんかにも広がってるのサ。売ってるパンは、それぞれの街に合わせたものだって聞いてるピ。次は分譲地をめぐって販売する、“動くトイット”なんかも考えているみたいだピ。ホシノさんは言ってたよ。「音楽とファッションと、そして食。それが集まると文化になる。だから僕たちは土地や建物じゃなくて、文化を作ってるんだ」って。ま、ボクにはよく分からないけどね。さて、そろそろ午後のパンが焼きあがる時間サ。ほら、いい香りがしてきただろ?早くしないと売り切れちゃうヨ。
ピーチクチクチク。
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